逆指値・トレイリングストップの具体的設定例と運用ルール

逆指値とトレイリングストップは損切りと利食いを自動化し、感情的な判断を排除するための最強ツールです。
本稿では基本概念の確認から、ATRなどボラティリティ指標を使った具体的な設定例、証券会社ごとの注文仕様の違い、実務で使える運用テンプレとチェックリストまで詳述します。

逆指値(ストップロス/ストップ注文)とは

 

逆指値注文とは、設定した価格に到達したら成行(または指値)で約定する注文方式です。
買いの逆指値は価格が上がったら買い、売りの逆指値は価格が下がったら売る仕組みで、主に損失限定目的で使われます。
リスク管理の基本であり、事前に損失幅を決めておくことでドローダウンを制御できます。

 

トレイリングストップ(トレーリングストップ)とは

 

トレイリングストップは逆指値の一種であり、価格が有利に動くたびに逆指値価格を自動で追随させる注文方式です。
上昇中は逆指値が切り上がり、反転して一定幅下落したら決済されるため、利益を伸ばしつつ逆転で被る損失を限定できます。

 

証券会社ごとの注文仕様の違い(注意点)

 

日本の証券会社ではトレイリング注文の対応や有効期間、信用取引での利用可否などに差があります。
例えば楽天証券のマーケットスピードIIやSBI系、kabu.com、iSPEEDなどではトレイリング注文を提供しており、仕様(刻み幅や有効期間)は各社で異なりますので事前確認が必要です。

 

ATR(Average True Range)を使う理由と計算

 

ATRは平均的な1日の値動き幅を示す指標で、ボラティリティに応じた損切り幅の決定に非常に有用です。
ATRを用いることで値動きの大きな銘柄は広めの逆指値、値動きの小さな銘柄は狭めの逆指値とし、刈られる頻度と被害を両方抑制できます。

 

実務で使える「具体的設定テンプレ」

 

以下は現場でそのまま使える逆指値・トレーリングの具体設定テンプレです。
ATRは14日を基本とし、スイング、デイトレ、長期の3つのケースで推奨値を示します。

 

運用タイプ設定方法実務コメント
デイトレ(超短期)逆指値幅=ATR(14) × 0.8〜1.2
トレーリング幅=ATR × 0.8
板の厚みが重要、板スリッページを想定して少し広めに設定する。
短期スイング(数日〜数週間)逆指値幅=ATR(14) × 1.2〜1.8
トレーリング幅=ATR × 1.2〜1.5
ATRベースでポジションサイズを決め、総資金に対するリスク(例:1回0.5%)を守る。
中長期(数週間〜数か月)逆指値幅=ATR(14) × 2〜4 または 重要サポートライン下
トレーリング幅=ATR × 2
業績変化やファンダを見ながらトレーリングを広めに設定する。

 

上記のテンプレは実務で広く使われる目安です。
例えばATR(14)=100円の短期スイングなら逆指値幅は120〜180円に設定し、逆指値を基準にポジションサイズを決めるとリスク管理が容易になります。

 

パーセンテージ方式との併用例(簡易テンプレ)

 

ATRが使えない場合や単純化したい場合はパーセンテージ方式も便利です。
例:短期は購入価格の−3%を逆指値、スイングは−6%を逆指値、トレーリングは最高値から−5%で設定。
ただしパーセンテージは銘柄ごとのボラティリティを無視するため高ボラ銘柄で刈られるリスクが高い点に注意します。

 

OCO・IFD-OCOとトレーリングの使い分け

 

OCO注文は「どちらか一方が成立したらもう一方を取消す」注文で、利確と損切りを同時に置くのに向いています。
IFD-OCOは新規注文と同時に利確・損切りのOCOを発注する方式で、エントリー直後のリスク管理を自動化できます。
トレーリングは上昇中に逆指値を追随させる機能ですから、OCOで利確幅と逆指値を同時に置きつつ、利確をトレーリングに置き換える運用が有効です。

 

証券会社での実例(国内主要ツールの仕様)

 

楽天証券のマーケットスピードIIやiSPEED、kabu.comなどはトレイリング注文を提供していますが、設定方法や有効期限、信用取引での利用可否などに差があるため、実運用前に利用規約を確認してください。

 

具体的な運用ルール(テンプレ)

 

以下は日々の運用ルールのテンプレです。
1)エントリー時に逆指値を必ず設定する。
2)逆指値幅はATR×係数で算出し、口座リスク(例:総資金の0.5%)を超えないように株数を決める。
3)利確は段階的に行い、残りはATRベースのトレーリングで伸ばす。
4)決算やIRなどイベント前はトレーリング幅を広げるか、トレーリングを一時解除する。
5)板が薄くスリッページが発生しやすい銘柄は指値でのイグジットや、小ロットでの運用を優先する。

 

具体例:任天堂(7974)での設定例

 

ケース:任天堂の短期スイングを想定。
想定ATR(14)=800円。
逆指値幅=ATR×1.2=960円に設定する。
総資金が100万円で1回の最大損失を0.5%(5,000円)とする場合、保有株数=5,000円 ÷ 960円 ≒ 5株に抑える。
利確は+15%で半分利確、残りをATR×1.2のトレーリングで管理する。
このようにATRと資金比率を連動させるとリスクが一定化されます。

 

トレーリングを使う際の注意点(実務の落とし穴)

 

  • 板の薄い時間帯で逆指値が成立するとスリッページで想定より不利に約定することがある点。
  • ボラティリティ急増時にATRが急拡大し、逆指値幅が大きくなりすぎる可能性がある点。
  • イベント(決算・IR)直前のトレーリングは急落で容赦なく約定するため、必要なら一時停止が有効な点。
  • 証券会社によってはトレーリングの刻み(呼び値単位)や有効期間の制約があるため仕様に注意する点。

 

検証と改善フロー(必須)

 

設定を決めたら必ずバックテストとフォワードテストを回します。
1)過去データに対しATR係数やトレーリング幅の感度分析を行う。
2)スリッページや手数料を加味したシミュレーションを行う。
3)最低3か月のペーパートレードで実地検証する。
4)月次で勝率、平均利益、平均損失、最大ドローダウンを評価しルールを更新する。

 

運用チェックリスト

 

項目確認内容
逆指値設定ATRまたは%で設定し、逆指値を発注したか
トレーリング設定トレーリング幅と有効期間を確認したか
ポジションサイズ口座リスク(例:0.5%)に基づいて計算したか
イベント確認決算・IRなどの予定を確認し前日対応を決めたか
検証バックテスト・フォワードの結果を記録しているか

 

参考記事

逆指値やATR、トレーリングの実例や歩み値・出来高の見分け方に関する当サイトの記事です。
プロの逆張り・順張りルールや資金管理の解説と合わせて参照してください。

 

まとめ:逆指値とトレーリングで勝率と利幅を両立する運用

 

逆指値は損失を限定する最も基本的な手段です。
トレーリングストップは利益を最大化するための実用的な拡張であり、ATRなどのボラティリティ指標と組み合わせることで信頼性が向上します。
証券会社の仕様を正しく理解し、バックテストとフォワードで検証した上で本運用に移行することが最も重要です。
本稿のテンプレを基に自分のトレードスタイルに合わせて最適化してください。

 

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