半導体後工程で稼ぐ“穴場メーカー”の探し方

導入:後工程が投資機会になる理由

ファブの高付加価値化やSiCやGaNなど新材料の普及で、後工程や最終検査の重要性が増しています。
前工程で作られたウェーハをパッケージし、信頼性試験や最終テストで合格させる工程が増えるほど、後工程装置や検査サービスの需要が拡大します。
この構造変化は大手よりも中小メーカーに先に波及することが多く、いわゆる“穴場”を見つける好機になります。

セクション1:後工程の業務分類と注目ポイント

1-1 パッケージング(封止・モールド・フリップチップ)

封止材やモールド工程の独自技術や特許、フリップチップ実装での実績がある企業は差別化要素になります。
資本装備投資の履歴や主要顧客(大手ファブ/ファブレス)の受注実績を確認してください。

1-2 ワイヤーボンディング・ダイアタッチ

ワイヤーボンディングやダイ接合はコストと歩留まりに直結します。
歩留まり改善の実績や歩留まりを上げるための検査プロセス改善の事例が開示されているかを探します。

1-3 ファイナルテスト(電気特性検査)

ファイナルテスト装置やテストソリューションを持つ企業は、半導体製造の立ち上げ期に強いです。
テスト時間短縮やスループット向上の技術があるかを評価します。

1-4 信頼性・環境試験(温度サイクル、湿度、EMC等)

信頼性試験は長期契約につながりやすい分野です。
データセンターや自動車、産業用向けに認証実績があるかは高評価ポイントになります。

セクション2:銘柄スクリーニングの実務チェックリスト

以下はそのまま使えるスクリーニング項目です。
各項目を点数化して合計し、閾値を超えた企業を詳細調査に回してください。

判定項目確認内容(例)重み
主要顧客(大手ファブ/OEM)の有無主要顧客との継続受注、長期契約の有無を確認する20
受注の先行性試作→量産化のトリガー(PoC完了→量産受注)15
装置・材料の独自性特許、独自プロセス、差別化材料(封止材等)15
歩留まり改善の証跡歩留まりに関するIR開示、顧客事例15
設備稼働率と稼働率上昇トレンド稼働率・出荷台数の推移10
財務健全性負債比率、フリーキャッシュフローの推移10
需給指標(出来高・売買代金)機関参入や急増トレンドの有無10
ガバナンス/IR透明性IR頻度、説明資料の充実度5

 

セクション3:具体的スクリーニング手順(10ステップ)

  1. 業種絞り込み:パッケージング、検査装置、検査委託(OSAT/ATE/FA)を対象にする。
  2. 時価総額フィルタ:目安は時価総額20億~500億円。
  3. 売上構成の確認:売上の50%以上が半導体関連でない場合は優先度を下げる。
  4. IRでの採用実績の確認:PoC→パイロット→量産の進捗を確認。
  5. 設備投資履歴の確認:過去2年の設備投資額と稼働開始時期をチェック。
  6. 歩留まり改善に関する数値開示:不良率低下、歩留まり改善のKPI有無を確認。
  7. 顧客リストの確認:大手ファブや主要ファブレスとの接点があるか。
  8. 特許・技術の確認:同業他社との技術差別化を特許や論文で裏付ける。
  9. 需給・板情報のチェック:出来高・売買代金の急変や機関の情報を確認。
  10. リスクチェック:資本調達の必要性、過大設備投資、単一顧客依存を確認。

セクション4:財務で見る“真の成長シグナル”

売上高成長率だけで判断すると誤認しやすいです。
以下の観点で成長の質を検証してください。

  • 粗利率の改善トレンドがあるか。
  • 営業キャッシュフローがプラスで稼げているか。
  • 設備投資を回収できる利益率・回収期間か。
  • 顧客別売上比率が偏りすぎていないか。

セクション5:IRと現場で聞くべき質問リスト

投資家デューディリジェンスでIRに直接聞くと有効な質問をまとめます。

質問理由
主要顧客の量産開始時期はいつか。収益化のタイミングを確認するため。
歩留まり改善の定量目標はあるか。KPIで進捗を測れるかを判断するため。
設備稼働率と今後の増産余地は。追加投資の必要性とキャパシティを見るため。
単価とマージンの見通し。利益率改善の根拠を確認するため。

 

セクション6:実例

実務で見た典型パターンを二つ紹介します。

ケースA:量産受注で一気に伸びた中小装置メーカー

概要:某中小は試作段階で大手ファブのPoCを通過し、翌四半期に量産受注を確保しました。
ポイント:受注発表後、出荷開始→月次稼働率上昇→歩留まり報告(顧客事例)という順で売上が立ち、四半期ベースで黒字転換しました。
学び:PoC完了のIRは“初動”の強いシグナルです。

ケースB:設備投資が過剰で苦戦した素材系

概要:別の中小は新設備に過大投資したが、顧客の採用時期が遅延し、借入金利負担が利益を圧迫しました。
ポイント:設備投資の回収計画と顧客の採用確度の両方を確認する重要性が浮き彫りになりました。
学び:キャッシュフロー予測と受注の確度を必ず確認してください。

セクション7:リスク管理とポジションサイズの目安

中小株の後工程関連はボラティリティが高く落ちやすいです。
リスク管理ルールを具体的に示します。

  • ポジションサイズは総資産の1〜3%程度を目安にする。
  • ストップロスは購入価格から10〜25%を目安に機械的に設定する。
  • 分割買いでリスクを分散する。
  • IRでの受注確度が下がった場合は即座に見直す。

セクション8:自動化・ツールで効率化する方法

APIやスクレイピングで出来高・信用残の監視を自動化すると効率が上がります。
ただし、TDnetやEDINETなど公式データは利用規約に注意して取り扱ってください。
アラート設定のポイントは“出来高急増+IR”の組合せです。

セクション9:すぐ使える短期判定スコア

下は短期判定のサンプルスコアです。

要素スコア基準
受注IR0=無 1=PoC 2=小口受注 3=量産受注
出来高増0=なし 1=一時 2=持続 3=急増かつ持続
歩留まり改善証拠0=無 1=説明あり 2=顧客事例 3=定量改善
財務・CF0=悪化 1=横ばい 2=改善 3=安定黒字且つFCF良好

 

まとめ

1)まずは上のチェックリストで複数銘柄をスクリーニングしてください。
2)スコア上位をEDINET・TDnetでクロスチェックします。
3)受注の確度と設備投資の回収計画をIRで確認します。
4)出来高・信用残・歩み値で需給の実体を検証します。
5)合格した銘柄は小さく入り、歩留まりや顧客採用の確度が高まった段階で段階増しします。
これが現場目線で“後工程の穴場”を探す実務フローです。

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